めまい
診断
・めまいに関しての問診
・神経学的診察
・頭部MRI検査
・重心動揺検査
総合的にめまい診断をします
治療
めまい診断に基づきめまいの原因や起こり方などをわかりやすく説明し不安を解消できるように努めます。必要な場合はそれぞれのめまいに適した薬で治療します。安静が必要な場合を除き平衡機能訓練や理学療法をお勧めすることがあります。
重心動揺計

めまいでお悩みの方へ

めまいの症状でぐるぐる回る、ふらふらする、くらっとするはどうして起こるの?めまいで悩んでいる方にとっては深刻でうっとうしい症状で頭の中で何か起こっているんじゃないかと心配になり、”なんとかしてほしい”と病院を転々としている方も少なくありません。
おとなの頭痛

なぜめまいがしたりふらふらするのか?

体のバランスは3つの異なる感覚器からの信号をキャッチし、脳がこれらを統合することで空間における自分の身体の位置関係などを認識しています。
からの情報
にある前庭(平衡感覚器)が頭の動きを感知
足裏からの情報(体性感覚)
によって今自分がどこにいてどのように動いているかを感知します。脳特に小脳はこれらの3つの感覚器からの情報を統合して制御しています。これらの1つでも異常をきたすとめまいを感じることになるのです。どの部位が障害されてもめまいはおこりますが多くはこの前庭の機能低下や障害によって起こります。
平行感覚器がうまく機能しないと急に振り返ったり下を向いたりした際にめまいを感じます。乗り物に乗っているときにも感じるかもしれません。人込みなどで回りが動いている状況でもめまいを感じる可能性があります。

めまいの症状

めまいの症状でぐるぐる回る、ふらふらする、くらっとするはどうして起こるの?前庭は平衡感覚を保つとともにいろいろな神経のネットワークを形成しています。
眼を動かす経路(前庭動眼反射)の障害があると目が回る、ものがぶれて見える、周囲が波打って見えます。
自律神経の経路(前庭自律神経反射)の障害で血圧変動や立ちくらみのような症状や乗り物酔いのような症状で吐き気、冷や汗などが生じます。
脊髄の経路(前庭脊髄反射)で首の筋肉や腰、足の筋肉まで神経が伝わっており肩こり頭痛、動くときに左右に片寄ったりふわふわしたりします。

めまいの種類

脳によるめまい

脳卒中が原因の場合
急性に起こる脳によるめまいは小脳や脳幹と呼ばれる部位の脳梗塞や脳出血などの可能性があります。めまい以外の症状を伴うことも多く、頭痛や片側の手足が動きにくい、半身の感覚がおかしい、物が二重に見える、しゃべりにくいなどの神経症状を伴うことがあり意識障害を伴う場がもうろうとする場合は緊急の対応が必要です。めまいで始まり遅れて意識障害や手足のまひが出現するような重症の脳卒中のこともあり要注意です。高齢者・高血圧・脂質異常・糖尿病などがある方は注意が必要です。
原因はさまざま、慢性的なめまいふらつき
難聴を伴い徐々にふらつきが出現する場合に聴神経腫瘍などの脳腫瘍の可能性もあります。水頭症を伴う脳腫瘍などで歩行障害をふらつきと感じている場合もあります。また、脳幹や小脳などの中枢神経の変性が原因で現れることがあり、その代表的な病気は脊髄小脳変性症です。気になる方は専門医を受診することをお勧めいたします。

耳によるめまい

良性発作性頭位性めまい 
寝るとき起きるとき、寝返りなど一定の頭位で回転性めまいが生じます。数秒から数十秒で治まります。耳石が三半規管に入ることで起こるといわれています。難聴や耳鳴はありません。
メニエール病
反復性めまいで蝸牛症状(難聴・耳鳴)を伴います。
前庭神経炎
感冒などによるウイルス感染で前庭神経が炎症を起こし強い回転性めまいが数日間起こります。難聴や耳鳴はありません。後遺症としてその後ふわふわする感じが持続することがあります。
突発性難聴 その他

その他のめまい

失神性めまい
血圧が下がりすぎると気を失うか、ふらふらして立っていられなくなることがあります。血圧があまりにも低くなりすぎると脳の血流が減って平衡機能がうまく働かなくなるとふらふら感が出現します。立ちくらみは起立性低血圧などによって脳血流が一時的に減るために起こる瞬間的なめまいです。神経の反射で起こったり、自律神経の調子が悪かったり、薬の影響などでも起こることがあります。
心因性めまい
じっとしていてもいつもふわふわ、ふらふらする感覚がある。歩くとふわふわ雲の上を歩いているような感じがする。明らかな原因がないのに、座っていても、じっとしていてもふわふわしている感じがする場合には心因性めまいの可能性があります。一般的には抑うつ状態や不安な気分になっていることが多いのですが、これらの精神症状が出現せず、めまいだけが前面にでることがあります。抗うつ薬などの服薬加療で徐々によくなることがあります。適度な運動や睡眠、笑顔が大切です。
頚性めまい
後頚部の筋肉の緊張が強いときにめまいが起こることがあります。頸椎の変形や並び方が影響していることがあります。ふらふら感が出やすく時に回転性の要素が加わります。首の筋肉は肩や頭の筋肉と連動することがあり肩こりや頭重感を伴うことも多いようです。筋緊張を緩和する薬でよくなることがあります
緊張型頭痛に伴うめまい
片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)
時々めまいの発作が起こり、その後ふわふわする感じが数日持続することがあります。若いころから片頭痛があったり、または、めまいの前後に頭痛が起こります。耳鳴りとか耳が聞こえにくいといった耳の症状を伴うことがあります。
加齢性平衡障害
高齢者にふらふら感で悩む方がいらっしゃいます。 色々な検査をしても大きな異常がなく頭の検査でも年齢相応の変化程度のこともあります。 

ちょっと一言

めまいとストレス

めまいの診療をしているとめまいの患者さんは不安を抱えて受診されることが多いようです。ひどいめまいは天と地がひっくり返るようなめまいが起こるのですから心配になって当然です。何かのめまいを発症した際に突然のことでの不安、めまいが治らないことでストレスになりうつ状態になることがあります。このような心理因子が平衡機能障害を悪化させめまいが悪化するという悪循環に陥ります。

片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)

当院を受診するめまいの患者さんで片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)の方が多いように思います。耳鼻科での受診で耳は異常がないよ、脳の検査もしておいたらといわれ受診する人、メニエール病として治療を受けている人、めまいで受診した際に頭痛もちが判明した方など様々です。片頭痛の方はめまいを起こしやすいことが知られており、頭痛とめまいが同時期に起こっていることが問診でわかったり頭痛ダイアリーの記録でわかったりすることがあります。抗めまい薬の効果があまり実感できなかった方が片頭痛の予防薬で頭痛もめまいも改善していくことを経験します。患者さんは耳鼻科でめまいのことを話され脳外科で頭痛の診療を受けたりしているため片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛)が見逃されている可能性があるのかもしれません。

めまいに関するQ&A

ひどいめまいがして病院を受診しましたが異常なしと言われました。
めまいはつらい症状でありながら、検査所見と症状が一致しにくい病気です。医療機関を受診して聴力が落ちてなければ異常なしとされる場合もありますし、頭の画像検査(CTやMRI)をして脳梗塞や脳腫瘍などなければ「心配ないです」と説明を受けることも少なくありません。「異常なし」「心配ないです」という説明は困っているめまいの症状の説明にはなっていないのですが、一部の患者さんは検査結果で問題がないことを聞いて安心され、不安やストレスが解消されめまいが改善する方がいるのも事実です。もう一つの異常なしの問題は、脳梗塞によるめまいの場合です。脳幹と呼ばれる部位に小さな脳梗塞を起こすと発症して間もないときに脳梗塞病変が捉えられないことがあります。そこで専門医による病歴聴取や診察所見からの診断が重要になります。
めまいの性状から診断することはむずかしいのですか?
診断が困難な場合や特徴がわかりにくいこともありますが、次のようなことに気を付けて診ていきます。発症が急なのか慢性的な経過なのか、1回限りの発作なのか反復性なのか、めまいの持続時間や聴覚症状(蝸牛症状:難聴、耳鳴り、耳閉塞感など)の有無、めまいが起こるきっかけ(誘因)の有無や頭痛などの随伴症状があるのかなどを組み合わせることである程度の診断をしていきます。
急性のめまいで聴覚症状(蝸牛症状:難聴、耳鳴り)を伴う場合は突発性難聴メニエール病を疑います。突発性難聴は1回のみでメニエール病は繰り返します。聴覚症状を伴わず1分以内におさまる回転性めまいは良性発作性頭位性めまい症、数日ほど持続する回転性めまいで発症前に風邪症状があれば前庭神経炎など疑います。寝る起きる寝返りをするなどの一定の頭位で起こる場合は良性発作性頭位性めまい症、首の動きや捻転でめまいが起これば頸性めまいを疑います。反復性めまいで片頭痛を伴えば片頭痛関連めまいと考えます。めまいに手足のまひやしびれ、嚥下障害など神経症状を伴えば脳の病気を考えます。
危険なめまいはどのようなめまいですか?
危険なめまいとは頭の中の病気で生じためまいです。見極めるポイントはめまい以外の症状の有無は重要です。めまいの強さや持続時間はあまり関係ありません。吐き気や嘔吐も耳由来のめまいでも起こりますので区別には役に立ちません。めまいを起こす脳の病気の代表的なものが脳梗塞です。主なものは小脳梗塞、脳幹梗塞です。小脳梗塞患者さんの3/4では回転性めまいないしは浮動性めまいを訴えます。吐き気・嘔吐・歩行障害が半数にみられます。頭痛は1/3にみられます。脳幹梗塞では、めまい以外に顔面の温度や痛みの感覚が麻痺したり、嚥下障害(呑み込みにくい)といった症状がでることがあります。また、脳梗塞で聴覚症状が出現することがあります。重症の場合は意識がぼっとなってくる意識障害がおこることがあります。高齢者で高血圧や脂質異常や糖尿病などの動脈硬化の危険因子がある方は注意が必要です。若い方では椎骨動脈解離(後ろ側にある動脈)による脳梗塞のこともあり後頚部から後頭部の痛みを伴う場合は速やかに医療機関の受診をお勧めいたします。
ひどいめまいがして頭が痛くて嘔吐しました。血圧が190と高い・・
高血圧をお持ちの中高年の方が突然の頭が痛くなり目が回り歩けず家族に連れられて受診することがあります。吐き気があり何度か嘔吐し麻痺はないのですがふらついて歩けません。受診した際に血圧が190/100と異常高血圧を認めました。頭部の精密検査で小脳出血でした。高血圧性脳出血の約10%程度を占めるといわれています。日中活動時に起こることが多く、突然のめまい、激しい頭痛、嘔吐で発症します。小脳症状で手足のまひはでませんが、立つことができず歩行できなくなることがあります。意識の障害があれば救急の対応が必要です。
朝起きるときにぐるっと目がまわるめまいがしました。しばらくするとめまいはとまります。
めまいの原因で比較的多いのが良性発作性頭位性めまいです。起き上がりや寝転んだり、うつむいたり寝返りをした際に回転性のめまいが生じます。めまいは数秒から30秒程度で何分も続くことはありません。同じ位置に頭を向けたり同じ動作を繰り返すと再び起こります。メニエール病と違って難聴や耳鳴りは伴いません。前庭にあるべき耳石が三半規管に入ることで起こるといわれています。頭部打撲後や長時間同じ姿勢で寝た後に起こることがありますが、多くの場合は耳石の滑落の原因は不明です。好発年齢が中年や中年以降であることから加齢現象とも考えられています。経過としては回転性めまいが1、2日から数日で消失した後にふわふわしためまい感が1、2週間続き完全に回復することを説明すると患者さんは安心していただけます。時に回復が遅れたりして1〜数か月かかることもあったり再発することもあり治療に難渋することもあります。
眼がぐるぐる回り、耳の聞こえが悪くつまった感じがして耳鳴りがします。
耳鳴りや耳閉側感を伴って繰り返し激しいめまい発作を起こすメニエール病やめまいと激しい耳鳴りと突然の聴力が低下するような状態の突発性難聴は耳鼻科での専門的な治療をお願いしています。ポイントはめまいに聴力低下や耳鳴を伴っているかです。特に突発性難聴は耳鼻科的な救急疾患と認識する必要があり数日以内には治療を開始したほうがいいとされています。稀ですが聴力低下を主な症状として急性発症した内耳を栄養している小脳動脈の閉塞による脳梗塞のこともあります。急性発症ではないのかもしれませんが、あるとき携帯電話を反対側で聞いた時に聞こえが悪いことに気が付いた聴神経腫瘍の患者さんもいらっしゃいます。
以前から頭痛持ちでめまいが起こると決まって頭が痛くなります。
普段は何ともないが時々めまいの発作があり、その後ふわふわした感じが数時間から3日ほど続きます。以前から頭痛もちで頭痛の特徴が片頭痛のかたに起こるめまいのことがあります。頭痛診断では前庭性片頭痛で片頭痛関連めまいと呼ばれるめまいです。難治性めまいの患者さんにかなりの割合で含まれていることが分かってきました。片頭痛の6割弱にめまいが起こっているとの報告もあります。片頭痛の予防薬で片頭痛の治療がうまくいくにつれてめまいが改善することがあります。頭痛とめまいを持つ患者さんを診療する際には頭痛のみ、めまいのみにとらわれずに双方向からアプローチしていくことが重要と考えています。
耳鳴りがします。悪い病気がないですか?
「耳鳴り」は外界からの音の刺激はないが、自覚的に音を感じる現象です。自覚しているかは別として難聴があることがあります。加齢性の難聴が最も多いのですが、薬剤性内耳障害などは感音性難聴となります。キーンというような高音性耳鳴りは感音性難聴に伴うことが多いようです。時に耳鳴りの訴えになるのですが、実は血管雑音を耳鳴りと自覚して受診することがあります。ザッザッと脈と同じリズムで音がすると訴えます。動脈硬化やひどい肩こりや血液の流れに過敏に聞こえる方も耳鳴を自覚されることがあるように思います。稀ですが耳の後ろに聴診器を当てるとザーザーと音がする場合は硬膜動静脈瘻(脳や首の血管の病気をご参照ください)という病気を疑います。
こどもがめまいを訴えるのですが大丈夫ですか?
めまいと言えばメニエール病と思っている方が多いのですが、こどもに起こることは少ない病気です。めまいが起こってないときはなにも症状がない場合は良性発作性めまいの可能性があります。健康上問題がない小児におこります。繰り返し起こる短時間の回転性めまいが特徴で、発作は前触れなしに起こり自然に軽快します。随伴症状・徴候として1.眼振(眼が揺れている)2.運動失調3.嘔吐4.顔面蒼白5.恐怖の少なくとも1つを伴います。回転性めまいをもつ年少児がぐるぐる回る症状を説明することが難しいかもしれません。発作的な落ち着きのなさがめまい発作のこともあります。めまいをおこしやすい脳腫瘍やけいれん発作や前庭障害などの耳の病気などほかの病気がないことが条件です。一度ご相談されるとよいと思います。